はじめに
ドバイの不動産市場は、無税制度や高い利回り、長期ビザ制度などにより、日本人投資家からの注目を集めています。実際に物件購入を検討する際、多くの方が疑問に思うのが 「日本からの送金や購入に対して申告義務があるのか?」 という点です。
結論から言えば、送金自体に直接的な申告義務はないものの、金融機関による報告制度や、購入後の所得申告の義務は存在します。また、日本居住者と非居住者では税務上の扱いも異なるため、投資を計画する際には十分な理解が不可欠です。
本記事では、 「送金」「購入」「保有」「売却」それぞれの局面での申告義務・注意点 を、日本居住者と非居住者それぞれの立場から徹底解説します。
1. 日本からドバイへ送金する際の報告義務
1-1. 外為法と「国外送金等調書」
日本から海外へ100万円以上を送金する場合、金融機関(各銀行)は「国外送金等調書」を税務署に提出します。これは外為法および所得税法に基づく制度で、マネーロンダリングや脱税防止を目的としています。
投資家自身が税務署へ直接申告する必要はありませんが、金融機関を通じて税務署に情報が届くため、送金の目的を正しく明記することが重要です。
1-2. 送金目的の明記
送金依頼書には「不動産購入資金」「頭金」など具体的に記載しましょう。漠然とした記載は税務署からのお尋ね(照会)につながる可能性があります。
1-3. 送金自体は合法
海外不動産購入目的の送金は合法であり、日本の法律で制限されていません。ただし、送金額が大きい場合は税務調査のリスクが高まるため、契約書・請求書・送金記録を必ず保管しておきましょう。
2. ドバイ不動産購入時の日本での申告義務について
2-1. 居住者(日本在住者)の場合
- ドバイでの物件購入そのものを日本で「購入時に申告する義務」はありません。
- ただし、購入資金の送金については国外送金等調書で税務署に把握されるため、資金の出所(貯蓄・給与・事業所得など)が正当であることが重要です。
- 贈与による資金の場合、日本国内で贈与税の課税対象になる点に注意しましょう。
2-2. 非居住者(海外在住者)の場合
- 日本に住所や居所がなく、非居住者として扱われる場合、基本的には日本での課税対象から外れます。
- ただし、日本国内の資産を処分して送金する場合、その処分益については日本の課税対象となる可能性があります。
3. 保有・運用中の申告義務について
3-1. 家賃収入の課税(居住者の場合)
ドバイ不動産から賃料収入を得た場合、日本では国外不動産所得として課税対象となります。
- 日本の確定申告において「総合課税」の対象
- AEDで得た収入を円換算して申告
- 必要経費(管理費・修繕費・減価償却など)を差し引いて申告可能
3-2. 家賃収入の課税(非居住者の場合)
非居住者は日本での確定申告義務はありません。ただし、日本国内に資産があり、そこから所得が生じる場合は課税対象となるケースもあるため、個別に確認が必要です。
4. 売却時(キャピタルゲイン)の課税について
4-1. 居住者の場合
ドバイでは譲渡益課税はありませんが、日本では譲渡所得として課税されます。
- 短期(5年以内):約39%
- 長期(5年以上):約20%
売却時の収入も円換算して申告が必要です。
4-2. 非居住者の場合
非居住者は原則、日本国外での不動産売却益は日本で課税されません。ただし、購入資金の出所や居住地の税制によっては別途課税の対象となるため、居住国での税務確認が必須です。
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5. 相続・贈与と申告義務について
5-1. 相続の場合
- ドバイには相続税はありません。
- しかし、日本居住者がドバイ不動産を相続した場合、日本の相続税法が適用されます。

国税庁ウェブサイトより参照:
5-2. 贈与の場合
- ドバイではギフト移転にDLD登録料が発生します(0.125%:一親等のみ、その他は4%)。
- 日本の居住者が贈与を受けた場合、日本の贈与税が課税されます。
6. 購入後に必要な「国外財産調書制度」
日本居住者で、年末時点の国外財産が5,000万円を超える場合、国外財産調書の提出義務があります。
- ドバイ不動産も対象に含まれる
- 提出先:日本の税務署
- 罰則:虚偽や未提出の場合、重加算税や刑事罰の可能性あり
7. 日本居住者 vs 非居住者:比較まとめ
項目 | 日本居住者 | 非居住者 |
---|---|---|
送金時 | 国外送金等調書で把握される | 同様 |
購入時申告 | 不要 | 不要 |
家賃収入 | 日本で課税対象 | 課税対象外(居住国の制度次第) |
売却益 | 日本で譲渡所得課税 | 課税対象外(原則) |
相続 | 日本の相続税が課税 | 居住国制度に依存 |
贈与 | 日本の贈与税課税 | 居住国制度に依存 |
国外財産調書 | 5,000万円超で提出義務 | 不要 |
まとめ
- 送金自体に直接の申告義務はないが、金融機関から税務署へ「国外送金等調書」が提出される。
- 購入自体の申告義務はなし。ただし資金源が贈与なら日本の贈与税に注意。
- 居住者は家賃収入・売却益・相続・贈与すべて日本で課税対象。
- 非居住者は原則、日本で課税されないが、居住国での課税に注意。
- 国外財産調書制度により、5,000万円以上の国外資産は税務署に報告が必要。
ドバイの無税制度は魅力的ですが、日本居住者である限りは日本の課税を回避できません。適切な書類管理と税務戦略をもって臨むことが、海外不動産投資の成功に直結します。